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2010年12月21日

『澪』と多佳女と幹彦

長田幹彦の古本をネットで見ていたら、かなり面白い情報に出会った。
といっても、多くの人にとって面白いわけではなく、極極極一部の人にとってだけ興味深いという代物である。


長田幹彦のはじめての小説集は、1912年に出版されたはずだ。
』である。「ミオ」と読むようだ。


調べてみると、意外なことに国立国会図書館には入っていない。
Webcatで見るとさすがに所蔵図書館はあるが少ない。
神戸市立図書館、鶴見大学図書館、明治大学図書館、そして、日本近代文学館だ。
Webcatの詳細画面によると、「澪」「零落」「寂しき日」「母の手」の四編が納められ、351頁。
籾山書店から、1912年8月に出版されている。
その籾山書店からは、前年の12月に『刺青』も出ている。
『刺青』の出現と『』の登場に間に、長田幹彦の京都・関西滞在、
さらに、谷崎潤一郎の
「京阪流連時代」がある。
谷崎は、『』の登場直前に、東京に帰ったが、
長田は、その後も京都・関西にいたはずだ。



さて、ネットの古本に戻る。
この『』が売られている。
このことはそれほど驚くべきことではない。
が、コメントとして

「磯田多佳宛ペン書献呈署名入」

と記されている。
実物を見ていないから何とも言えないが、長田幹彦が、
祇園大友の「女将」磯田多佳へ送った本、ということか。


磯田多佳に関しては、直ぐアクセスできそうなものとして、
次の二つの文献がある。

谷崎潤一郎「磯田多佳女のこと」(1946)
杉田博明『祗園の女 文芸芸者磯田多佳』(1991→文庫2001)

杉田の本には、後年、長田が磯田をどうとらえたかなどが引用されているが、
残念ながら、いろいろ問題があり、信頼性は低い。
結局自分で確かめないといけない、煩わしいが…。

ともかく、長田は、もしかすると、この本を持って大友を訪れたのかもしれない。
磯田は、この本を読んだのかもしれない。何か彼女の書き込みでもあれば面白い。


そして、誰かが古本市場へと流したわけだ。


現在の所蔵は、「永楽屋」。
愛知県の古書店だ。
価格は、「75,000円」。
公共の図書館が購入すれば、見ることも可能になる。



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Posted by 愚華 at 17:36│Comments(0)凡観
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