京つう

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2008年10月25日

「反転京都」物語としての「坑夫」

漱石の「坑夫」を読んだ。
もちろん京都は一切でてこない。
地理的に言えば、語り手は東京に居るようだ。

語り手は自分の若いとき、19歳で、女性関係のもつれから逃げるため、
自殺か自滅ということで思いつめて、東京を逃げ出した。
そして、坑夫斡旋のポン引きに誘われ、
足尾銅山へ行き坑内に入る。
その事情を語るのがこの「坑夫」という小説である。

前作の「虞美人草」は、京都から始まった。
京都は重要な場であった。
単純化すると、京都に象徴されることと東京に象徴されることの、
争い、葛藤、矛盾、妥協が「虞美人草」を構成している。

それに対し、「坑夫」では、東京も極端に背景化している。
もちろん「京都」の「き」の字も出てこない。

しかし、「坑夫」の場である、東京のはずれから足尾まで、そして、足尾の銅山、
それは、東京‐京都の対極にある場、ともいえる。
ということは、「坑夫」は、東京‐京都の反転地、の物語であり、
「坑夫」にでてくる事柄は、東京‐京都の反事柄となるわけだ。

日本の最低地として、銅山の坑内がある。
その最深部にうごめいた「坑夫」の主人公は、
「虞美人草」で比叡山に登ってゆく甲野さんと宗近君の、
正反対に位置している。
しかし、人格としては同一だ。


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Posted by 愚華 at 19:07│Comments(0)読む
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