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2011年11月04日

『如何なる星の下に』でB級グルメ

つい先ごろ『私の東京地図』(佐多稲子)が、新装版で文庫化され、
すごく喜んだのだが、今度は高見順である。
高見の戦前の長編、『如何なる星の下に』が、講談社学芸文庫で出版された。

やはり高額。
この値段は何とかしてほしい。280頁強で、1400円。
うーーんん。


物語は、1938年の日本。舞台は浅草。
1938年10月頃から1939年1月頃まで、である。
それが小説内時間と思う。

主人公は、小説家の倉橋。
倉橋は、山の手の大森にどうも家を持っている。
そこに家族などがいるのかどうか、あいまい。

この倉橋が、軽芝居と漫才とレビューが盛んな浅草を漂う。
その物語だ。
倉橋の、レビューダンサー小柳雅子への純情が、小説の軸だ。

楽しいのは、当時の食べ物屋が出て来ること。
嬉しいことに「『如何なる星の下に』小説案内地図」がついている。

みると、市電の「田原町」電亭近くに「仁丹塔」がある。
倉橋のアパートは、「田原町」の近く。三階に部屋があるせいか、「仁丹塔」が見えるらしい。

1938年11月3日、午後3時頃。

「…私はアパートの窓から外を眺めていた。田原町の仁丹の広告灯が、――
電気のつかない昼間の広告灯というのは、さらでだにしょんぼりとしたものだが、
冷たい雨にずぶ濡れになって侘びしく情けなさそうに立っているのが、私の眼に
入り、屋根ばかりしか見えない窓外の索寞とした景色の中で、特に私の眼を
ひくものといったら、それだけなのであった。」

電気のついていない「仁丹広告灯」の記述。
侘びしさを際立たせる巧みな筆致のような感じがする。


年表をみると、この日、近衛首相が、東亜新秩序建設を声明した
いわゆる「第2次近衛声明」を出したようだ。

73年前のことだ、と今気付いた。

B級グルメ的
2011年現在、お好み焼き、というと、関西的、大阪的食べ物、というイメージがある。
ところが、この『如何なる星の下に』では、アパートでいやな気持ちになった倉橋が

「―そうだ。お好み焼き屋へ行こう」

と「暖」と「火」を求めて動き出すところから、小説も動き出す。
本願寺裏手の田島町の一角は、お好み横町と呼ばれ、三軒お好み焼き屋が集まっていた、らしい。
その中の一つ「風流お好み焼 惣太郎」が、倉橋の行きつけで、この物語でもキーとなる店だ。

このお好み焼き、どういうものだったのか…。

タグ :高見順

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Posted by 愚華 at 19:32│Comments(0)読む
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