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2008年07月11日

十二階崩壊

今時、今東光を読む人間なんかほとんどいないだろうなあ、
と思いながら、彼の『十二階崩壊』を読了。

今東光の青春時代の物語。自伝的小説。
これは、今の幼い頃や谷崎の小説家デビュー前の描写もあるが、
だいたい、1919年から1921年初めまでの物語、と思われる。

しかし、時間的構造化が、本人にははっきりしているのだろうが、
読む側はよくわからないという代物で、
なんか行ったり来たりして、不明な部分が多いまま、終った。
ただ、終りはなかなかいい。
読者は関東大震災による十二階崩壊を知っているので、
また、題も「十二階崩壊」なので、
小説中では崩壊しない十二階が、小説を読み終わった頭の中で、
音を立て、土煙をあげ、崩壊していく。
その終わり方が、いい。
今の時代の終わり方を予見しているのなら、ちと、困るが。

時間的構造化はあいまいだが、今自身の女遍歴は、おそらく本人にとって明晰で、
その順序と、その女をめぐる本人の記憶と思索とフィクションで、
この『十二階崩壊』は、枠どられ、物語の流れが、生み出されている、そう感じる。

「女」の順は以下の通り。

①勢以子=葉山三千子(彼女は高橋英一=岡田時彦と恋人関係、今東光とのことは詳しくはふれられていない)
②キヨ・ハウスの女、トミー=お富
③野毛の女、久子
④小谷ヘンリー夫人(今と肉体関係は最後までなかったことになっている)
⑤明石ハマ子=英百合子(但し神戸時代の回想内に登場、性関係はない)
⑥真砂町坂下のカフェ女給で白系ロシア人、サーシャ
⑦友人の家の女中、お菊(但し関学時代の回想に登場)
⑧浅草日本館での雑魚寝
⑨日本館女案内人、鈴子
⑩十二階下銘酒屋の女、お啓


タグ :谷崎潤一郎

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Posted by 愚華 at 15:51│Comments(0)読む
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