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2012年02月26日

『月光ゲーム Yの悲劇’88』も読んでみた。

『月光ゲーム』は、有栖川有栖のデビュー作。
1989年1月に刊行された。

大学生たち4グループがキャンプ場で出会う。
二日目の朝、女子短大生の山崎小百合が急に姿を消す。
と、近くの休火山が、200年ぶりの大噴火。
小百合を除く大学生たち16人は、町への交通路を失い孤立。
その孤立状況のなかで、連続殺人事件が起きていく。

『月光ゲーム Yの悲劇’88』も読んでみた。

↓↓内容にふれていますのよろしく↓↓

結局殺されるのは3人。
(うち一人の死体は出てこない(指のみ出現))
他に2人が、火山噴火に巻き込まれ死亡。
5人も死ぬのだから、ミステリーとしてはなかなかだ。


犯人は、「読者への挑戦」の後、最後に明らかになるのだが、
ネットを見ると、動機が弱過ぎるという意見が多い。


しかし、本当に弱過ぎる動機か…。
それについて少し…。

「弱過ぎる派」の方のブログからその見解をいただいておこう。

「犯人が…(中略)…殺人に及んだ理由は、残念ながら少々薄弱で、今ひとつ納得がいきにくい。
犯人は夜、山崎小百合と逢っているところを被害者の二人に冷やかされ諍いをしていた。翌朝、ショックを受けた小百合は山を降りていったが、その直後に噴火があり、犯人は彼女が巻き込まれて死んだと考えた。そして自分のふがいなさに怒りが湧き、原因を作った者たちへの殺意が芽生えたという。
しかしちょっと冷やかされたくらいで山を降りる小百合の行動は極端すぎて想像がつきにくいし、山崩れをみて即、彼女が死んだと考えるのは、あまり自然ではない。」(「RAY'S ミステリ批評」)
http://www1.jcn.m-net.ne.jp/rays_room/index.html)(2012年2月21日アクセス)

強引ながら、だいたいまとめるとすれば、
犯人(=年野武)や山崎小百合の「純真さ」と殺意の関係が弱い、
ということであろう。

さて、少しわき道から。

ホイチョイプロが原作で、三上博史、原田知世が主演した迷作=名作映画
『私をスキーへ連れてって』は、バブルの世相と文化を描き、戯画化している。
この映画の封切りは1987年の11月。
記憶ではセックスシーンはない。
むしろ、恋愛に奥手の若手サラリーマンが主人公。
その矢野文男(26歳・商社マン)の恋愛への関わりを参照すると、
『月光ゲーム』の犯人=年野武(東京の雄林大学法学部3回生)のある種の「純粋さ」は、
当時の文脈では、理解可能なのではないだろうか。

『月光ゲーム』に出てくる学生のうち1回生たち、5人は、1987年には、
高校3年生で受験だから、映画(『私をスキーへ連れてって』)は見ていないかもしれない。
しかし、他の12人は、見ている、と考えてもいいのでは…。
特に雄林大学の方々は、東京で、バブルの雰囲気に巻き込まれているはずだし。

当時の文脈では、二十歳前後の男女に「純真さ」や「純粋さ」を求めるのも理解可能。
その「純真さ」「純粋さ」をからかわれて、山を下りたり、殺意を生むのも理解可能。
ではないか。

もう一つ。

青少年の性行動調査からみておく。
1987年の調査(第3回)を見ると、大学生男子の性交経験率は、46.5%、大学生女子は、26.1%だ。
(最新の2005年調査(第6回)では、大学生男子は、61.3%、大学生女子は、61.1%。)
『月光ゲーム』で登場する6人の女子学生のなかで、4人か5人は処女であった。
男子学生では、11人中6人は童貞ということになる。
こうした性経験のあり方は、また、「純真さ」や「純粋さ」を生む構造となる。
ここからも動機に関して理解可能、ということにならないか。


それはそれとして、…。

有栖川有栖の『月光ゲーム』も京都に関わるミステリーだ。
主人公の有栖は、同志社大学がモデルとなっている、京都の私立英都大学の一回生。
英都大学推理小説研究会が、『月光ゲーム』をはじめとする
いわゆる「学生有栖シリーズ」の「探偵」的役割を果たしているからだ。

このシリーズは『月光ゲーム』を含めて4つの物語になっている。

『Mystery Seller』の「四分間では短すぎる」は、そのサイドストーリーということになる。


タグ :ミステリー

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Posted by 愚華 at 14:38│Comments(0)読む
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