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2012年04月13日

『桜さがし』の季節

柴田よしきは、宮部みゆきより面白いのでは、と思ってしまう。
思い違いかもしれないが。

今回読んだのは、『桜さがし』。集英社文庫版だが、文春文庫からも最近出た。

『桜さがし』の季節

連作短編集。もちろんミステリーで、京都が主な舞台。
登場人物たちは、大学を卒業してすぐくらいの若いひとびと。
歌義、陽介、綾、まり恵。
この4人は、中学校時代新聞部に属していた。
その時の顧問が、浅間寺竜之介。
社会科担当だったが、この物語が始まる5年ほど前、
推理小説の新人賞をとったのを機に、教育界からおさらばして、ミステリー作家になった。
…という設定。

8編の短編からなり、1997年の秋から99年の秋まで、短編の中で2年の時間が流れる。
それぞれの短編で、殺人事件など、ミステリー的出来事が、5人の周囲で発生。
それを紐解いていくというもの。その中で若い4人の関係性、恋愛や友情が揺れ動く。
中身を書くと長くなるので略すが、大変よいでき、と思う。


赤垣屋が2回も登場。(「一夜だけ」と「桜さがし」で)
赤垣屋好きとしては、そこもよかった。


内容略、としたが、「夏の鬼」のことは少し書いておこう。

ここでは殺人はおきない。
京都大学がモデルと思われる大学の教授が、テレクラで知り合った女子中学生と
自分のマンションで酒を飲みセックスをした。
しかし、なぜか大声で喚いたために、マンションの住人が警察に通報。
で警察が、女子中学生を発見。逮捕は免れずとなって、大学に辞表提出。
というのが事件の概要。(1998年8月15日、大文字の夜)

この件に、農学部の大学院生であった綾を好きになっていたが、
何らかの事情で退学してしまった、一ノ瀬裕太が、関連していたのである。
ここのところが面白い。

それはさておき、一ノ瀬と大学教授の佐波木の関係は、複雑。
一ノ瀬は、家の事業失敗で生活費も学費も自分で出していた。
その費用ねん出のため、夜の祇園のスナックでバーテンのバイトをしていた。
(このあたり、山村美紗の『華やかな密室』とつながる)
一ノ瀬はホステスの由希子と「いい仲になった」が、由希子は、佐波木教授とも
愛人関係を結んだ。
そのため教授は、一ノ瀬を退学に追い込み、由希子を独り占めしようとした。

こういう背後の物語がある。

その上に、綾と裕太の恋愛のぎこちないはじまりが重なる。
かなり魅力的な短編であった。


タグ :ミステリー

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Posted by 愚華 at 18:32│Comments(0)読む
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