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2010年01月03日

『文壇栄華物語』

著者は、大村彦次郎。ちくま文庫として昨年末出版。
足掛け2年で読了。

人間関係の流れや人と人の出会いを軸に、戦後10年の「文壇」史を描いたもの。
最近、太宰治がある程度ブームだし、坂口安吾にも関心が向いているし、
松本清張も生誕100年で注目されたので、もしかすると興味を持ち面白いと思う人もいるかもしれない。
この3人は主役級として登場する。
ただ、この本を面白いとするのはマイナーだろうなあ、と思う。
しかし、分厚いものに挑戦するにはいいかもしれない。
参考資料まで入れると539ページある。

読んでいて思い出したのは、伊藤整の『日本文壇史』。
記述の仕方が似ている気がしたが、伊藤整のものは途中挫折中なので大きなことは言えない。
解説を書いている坪内祐三は、
「伊藤整の名著『日本文壇史』よりも、面白く読める」という評価。
どちらが面白いはさておき、似ているということでしょうね、やはり。

読んでいて感じたのは、ジャーナリズムの東京中心性。
特に松本清張のデビューに関して書かれている九州文学の話は悲しい。
現在はインターネットが普及し、情況は異なるのかもしれないが、
どうなのだろうか。
戦後における帝都の再成立という話でもある。

ジャーナリズムの東京中心性に関与したらしいのがGHQというのも興味深い。
1949年3月にGHQは、デフレ政策をとって、過度経済力集中排除法を、
配給元の日本出版配給株式会社に適用。
秋にかけて、弱小出版社がバタバタと倒産したらしい。

ふと思い出したのは、京都の出版社である。
戦後すぐいろいろ出来たはずなのに、倒産したり東京に出たりで、
現在はその数は少ない。
GHQと東京の戦略にやられたのかもしれない。


買って読むには値する本。持っておいて辞書代わりも使える。
ただ、文学に興味がないと途中で眠くなる可能性が大。
戦後文学史を知らないので、という場合の勉強にはなる。
これを参考に面白そうな中間小説を読んでいくというのもいいかもしれない。



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Posted by 愚華 at 11:23│Comments(0)読む
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