京つう

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2009年05月27日

「京都に学ぶ」に躓く。

たまたま、某書店で眼に入ったもの。
「京都に学ぶ」シリーズである。
今のところ全4巻。白川書店が出版。

立命館大学京都文化講座、のブックレットである。

文学部長の木村一信による「刊行にあたって」を見ると、
立命は、東京キャンパスで「立命館京都文化講座」を2007年2008年に開講。
24回の講義がなされたらしい。6回からなる4テーマのもので、
それが、この全4巻のブックレットとなった。

それぞれ定価714円。高くないし、デザインも悪くなく、作りもいいようだ。
ということで、内容的に興味がある講義が載っているものを2種類だが購入した。

「京都に学ぶ」に躓く。

『京の色彩』、『京の荘厳と雅』である。

わるくはないが…。



愚かにも、漱石と京都に関心がある。
『京の荘厳と雅』のパンフレットに「夏目漱石と<京都>」という論考があったので読んでみた。
『門』が扱われている。

えっ???

「宗助は第三高等学校の学生」とある。
さらに、「安井は宗助と同じ第三高等学校の学生」とある。
さらにまた、「宗助は第三高等学校に入学して以来、安井が唯一の友人で、大きな存在」とある。

えっ???

愚かにも、宗助と安井は、大学生(たぶん京都帝大)と思っていたのだが…。

一応、岩波文庫版の『門』を見てみた。
京都の話は「十四」にある。ここは、この『門』の物語全体の始まり、であり、主人公の宗助と御米の「終わり」の始まりでもある。極めて重要な部分だ。

「彼(宗助)はこの暑い休暇中にも卒業後の自分に対する謀を忽かせにはしなかった。彼は大学を出てから、官途に就こうか、または実業に従おうか、それすら、まだ判然と心に極めていなかった…」

やっぱり、京都帝国大学学生であった。
高校生か大学生かで問題は変るのではないだろうか。これは『三四郎』とも関係する。

しかし、この間違いは少しひどくない?

これ東京でまず講演があったはず。そこでしゃべったとき勘違いというのはありえる。その場で、指摘はなかったのか?調べることもできるし、訂正もできるはず。
また、これ、『論究日本文学』第88号(2008年)に発表したらしい。補足して転載、とある。『論究日本文学』のこの論文でも宗助は第三高校の生徒とされているのかなあ。もしそうだとして(そこまで調べる気力はないけど)誰かからの指摘はないのだろうか?『漱石全集』を使っていることになっているし、確認できると思うのだが。
で、この著者、『京の荘厳と雅』というパンフレットのコーディネーターでもある。当然校正とかあると思うが。また、白川書店の担当者は目を通していないのだろうか?

著者の瀧本和成は、専門は日本近代文学。
日本文学じゃあない、とかいうのならまだ分かるのだが。
どうなっているのだろう。(専門外の人の初歩的ミス、勘違いというレベルではない感じだが)

全部回収で印刷し直し、ということもありえる。

20090529追記

上の問題、間違っての罵詈だと大変失礼にあたるので、別な形でもたしかめてみた。
こういう方法である。
「青空文庫」で「門」のテキストをダウンロードした。
そのテキストを全文検索した。
入れた単語は「三高」。
一件もヒットしなかった。

20090603追記

先日書店で確かめたが、6月はじめ時点では訂正はない。
大丈夫なのだろうか。

20090603追記

「2009年度 立命館大阪プロムナードセミナー」という企画があるらしい。
こうある。
「第4回 2009年6月22日(月):夏目漱石と<京都>-「門」の世界-  瀧本 和成 文学部教授
夏目漱石の小説『門』は、宗助と御米の物語ですが、ふたりは<京都>で出逢い、恋愛をします。作者は、何故ふたりを<京都>という地で出逢わせたのでしょうか?それはその後のふたりの淋しい夫婦生活とどのように関わっているのでしょうか?漱石が<京都>を描いた他の作品『虞美人草』や『京に着ける夕』なども視野に入れながら、そうした謎に迫って行けたらと思っています。」
このとき宗助の最終学歴はどう説明されるのだろうか。

20090627追記

6月22日のセミナーではどう説明があったのか。
ともあれ、『京都に学ぶ』には、まだ訂正は入っていないようだ。
やれやれ。

20090724追記

どうも、この間違い、気づかれていないのでは。
7月23日に書店で確認したが、宗助が三高生だったという記述は直っていない。
直接指摘したほうがいいのかなあ。

20100120追記

「京都に学ぶ」シリーズの第5巻が出た。
それはそれでおめでたいことなのだが、宗助が三高生だったという記述はそのままだ。
訂正されている形跡はないし、訂正のメモなどが挟まれた形跡もない。
ただ、いつものように、ジュンク堂で見ただけなので、本当のところは分らない。
出版社も著者も書いた記述の正確性などどう思っているのか、そちらも知りたくなった。

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Posted by 愚華 at 15:47│Comments(0)罵詈
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