女紅場と加茂川
祗園冊子の二つ目の歌。
「女紅場の提灯あかきかなしみか加茂川の水のあをき愁か」
「女紅場」には「にょこうば」とルビがある。
現在の祗園女子技芸学校の前身の八坂女紅場のことであろう。
舞や唄などをはじめとする芸事を教授する機関・学校のこと。
ここにもあかい提灯がかかげられていたらしい。
「
女紅場‐提灯‐あか‐かなしみ」と
「
加茂川‐水‐あを‐愁」を並べ、
色彩的にも、絵画的にも対照化させた歌。
「
女紅場」の
灯を見ているのは夜であろう、
「
加茂川」のみ
水を青く感じるのは朝であろうか。
とすれば、時間的な対照もある。
祗園から
加茂川にかけての情景と
その情景を見て抱く気持ち・感情をあらわしている。
「
悲しみ」と「
愁い」というところに
デカダンな気分が漂っている。
と妄想。
ところで、加茂川の水は、谷崎潤一郎も「朱雀日記」に記している。
しかし、「女紅場」への言及はないはず。
「女紅場」は、表舞台を支える裏で、しかも、「学習」「修業」の場。
快楽主義者としての谷崎は、そうした場を好まなかったのかもしれない。
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