『京都の祭に人が死ぬ』/題がいい。

愚華

2012年02月29日 16:00

京都で殺人事件といえば、かつては山村美紗が大活躍だった。
彼女は、1996年9月5日、東京で小説執筆中に死亡。
その後、「京都」「殺人」のノベル化は、
何人かあとを継いでいるが、2008年からは、柏木圭一郎が活躍中。

その山村美紗が、1981年に単行本として出したのが、短編集
『京都の祭に人が死ぬ』である。
中身はともかく、表題がいい。



これは集英社文庫版。7編からなる。
(↓内容に言及↓)


人が死ぬ京都の「祭」は、というと…

2月4日の盧山寺の鬼法楽。←「鬼法楽殺人事件」
(この短編では、太秦映画村でも殺人が起きる)

4月29日に行われる、城南宮の曲水の宴。←「華やかな殺意」
(京都市の城南宮では、曲水の宴を4月29日と11月3日に行っている、らしい。
ただ、城南宮に固有の「祭」ではない。)

6月5日から6日にかけての、宇治県神社の県祭り。←「くらやみ祭に人が死ぬ」
(宇治市で行われるが、現在分裂状態だったのでは…)

7月17日の祇園祭・山鉾巡行。←「祗園祭殺人事件」

10月22日の時代祭り。←「時代祭に人が死ぬ」

10月22日の鞍馬の火祭。←「鞍馬の火祭」

「なぜにあなたは京都で死ぬの?」の一編だけ、特定の祭とは無関係。


「時代祭に人が死ぬ」は、殺人が派手。
時代祭りの行列の先頭にたつ名誉奉行。
この小説では、京都市長であるが、
彼がテレビ中継の放送席前を通過するときに、
爆殺される。

すぐに実況を中継した鳥居アナウンサーの語り。

「市長は、爆弾によって、死亡されたようです。
馬も一頭は即死、一頭は、うしろ脚がとんで、重傷です。
馬車は、ふっとんでしまって、影も形もありません。…」

驚くことに、25分の検死で、時代祭りは続行される。

次に、静御前が、放送席前で倒れる。毒殺。
「重なる凶事」で、この年の時代祭りは中止となった。


何といっても、放送席前での爆殺は凄い。
それで祭りが中止にならないところもスゴイ。
さらに毒殺もあるところがすごい。

爆弾犯は大学生。兄が、赤軍派で、ハイジャックに失敗して死んでいる。
ハイジャックを失敗に導いたのが、人質になっていた、市長。
当時は大学教授だった。
静御前は、恋人が大学院生で、その恋人が赤軍派から抜けようとしていたため、
警告で殺されたのである。
つまり、爆殺犯=毒殺犯(大学生)も赤軍派だった、ということになる。

発表当時としては祭での爆殺は、荒唐無稽な殺害方法だったのでは。
ただ、いまでは、2005年7月7日にロンドンのタヴィストック広場近くで起きた
2階建てバスでの自爆攻撃もあり、現実感は増しているだろう。
左翼過激派でなく、回教過激派が犯行、というストーリーになるかもしれない。

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