『京都駅殺人事件』の殺害現場はどこだ

愚華

2012年02月10日 18:08

西村京太郎の京都を主な舞台にした「長編推理小説」。
「長編推理小説」というコンセプトは、光文社文庫の表紙に書かれている。



(↓↓内容に言及↓↓)


いきなり殺人事件が起きる。しかもその犯人は直ぐに分かる。
被害者は、浪人生の木村誠。犯人はその友人で、同じく浪人生である橋本眞人だ。
浪人生の橋本は、爆弾を作っている。この爆弾で、1997年に完成した新京都駅ビルを脅迫する、
というのが、この小説の前半部である。
(小説内の時間は、1999年の7月、祗園祭りあたり)

橋本眞人は、京都駅ホームで爆弾を破裂させ、
JRの脅迫に成功し、1000万円を奪取するが、
金を奪取した直後に、警察のパトカーに追われ逃走するなか、
交通事故死してしまう。
金は半分の500万円を殺した友人の両親へ送り、あとの半分は、誰に送ったか不明だった。
(いずれも受け取らない)

事件はこれで終わらない。

橋本の遺志を継いだ人物が現れる。
彼=君原哲也は、橋本の兄の友人で、新京都駅の設計の応募した人物。
橋本眞人が私淑し、新京都駅が京都の良さを破壊するものだ、という思想を、
抱かせるに到った人間。橋本から500万円贈られたが送りかえしている。
この君原と十津川(+警察)が、新京都駅の破壊と金銭の奪取をめぐって、
戦う、というのが後半のストーリー。
その間に、君原は、自分のことが発覚しないように、橋本の兄を殺害する。


京都駅殺人事件とされているが、2件の殺人はいずれも東京で起きる。
京都は、破壊されるか・されないか、という緊迫した舞台と、
脅迫による金銭奪取の現場として、用意されている。
(この奪取の現場が笑わせる)
京都ミステリーとしては、なかなか特異なケース。

簡潔な文章でテンポよく進むのでぐいぐいと引っ張られる。
ただ、推理小説として、ミステリーとしてどうか、といえば、
真犯人の発覚があまりにあっさりしている点に不満が残る。
とはいえ、そういうミステリーもありか。

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