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2009年02月04日

「祗園」に「欧羅巴」を幻視する

吉井勇の処女歌集は『酒ほがひ』である。

大変便利な事に、この歌集はネットで見ることができる。

国立国会図書館の近代デジタルライブラリーに、マイクロフィルム版がアップされているだ。
ただ、印刷などは悪い。つまり、画面的にはよくはない。

さてと、奥付をみると「明治四十三年八月三十一日印刷/明治四十三年九月七日発行」になっている。
1910年の出版だ。

奥付の一頁前に、この書籍のデザインなどの担当者が列記されている。

「装幀‥‥‥‥‥‥高村光太郎氏
カット‥‥‥‥‥藤島 武二氏
木版彫刻 伊藤凡骨氏
挿画‥‥‥‥‥‥木下杢太郎氏
木版彫刻 伊藤凡骨氏」

パンの会関係者による「美術」と見ることができそうだ。


前にも書いているが…
『酒ほがひ』には「祗園冊子」が入っている。
183頁から200頁まで。
49首ある。


ところで「カット」である。全頁同じカットであるので、「祗園冊子」のところに祇園っぽいイメージのカットが使われているわけではない。
藤島武二によるカットは、洋酒の酒宴のテーブルを描いている。
ワインクーラーにワインのボトルが納まり、ワイングラスがテーブル上にある。
皿に盛り付けられた果物。そしてランプも見える。
イメージ的には、「西欧」である。
ということは、「祗園冊子」の49首の歌も西欧とのつながりがある、ということを意味してはいまいか。
作者の吉井勇は、おそらく、「祗園」を通して「欧羅巴」を幻視しているのである。


「圓山の長椅子に凭りてあはれにも娼婦のあそぶ春のゆふぐれ」


これが第3首であるが、「長椅子」には「ベンチ」とルビが振られている。
「凭りて」は「もたりて」と読むのだろうか。
この頃の「娼婦」が、はたして円山公園のベンチに行く自由があったか。
分らない。
ただ、「欧羅巴」の退廃を幻視して、歌っているいるようにも見えなくもない。


タグ :吉井勇

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Posted by 愚華 at 20:38│Comments(0)読む
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