愚華抄

谷崎潤一郎のことを調べていた時のことだ、と思う。
谷崎潤一郎と吉井勇の二人の交友を主題とする小説があることを知った。
そのときは、「なんだ、小説か」と思ったのと、
二人の関係・交友がそれほどのものか、と感じたのと、
吉井勇の京都との関係、特に初期の関係の知識がなかったので、
すこし記憶に残ったに過ぎない。
誰が書いたものかさえ記録しなかった。

そのうちに吉井勇が、谷崎より以前に京都に来たこと、
三回目のその来洛で、祗園の歌を作ったことなどを知り、
ヤバ、もう一度あの本を見なければ、と思ったいた。
が、全く手がかりはない状態だったのだ。

不思議なことはあるものだ。
京都からかなりはなれた雪の町の古本屋に何気なく入った。
と、谷崎関係の本がいろいろある。
値段的にも高くはない。
オヤ、と思って背表紙を見ると、
『遊草の二人 潤一郎と勇』とある。

これがその本だった。

ユングならシンクロニシティといっただろうね、こういう現象は。
しかし、単なる偶然である。
意味を見出したいという欲求は、「意味の動物」人間には不可避であるが。


今年初めて読了した本は、そういうことで、
『遊草の二人』である。
予想通り、それほどの本でない。
しかし、なんかほっとした。

著者は真下五一。
むしろこの著者の経歴などが新しい興味として登場。
面白いかもしれない。