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2011年11月30日

錦市場/異教徒の晩餐/追想の殺人

最近錦を時々通る。
何となく感じるのは、「観光化」。
これを実証するためには、錦市場における各店舗の
内容形態の年次変化を押さえなければなるまい。

しかし、ミステリーを最近読んでいると、
そこで言及された「錦」を並べると、
何かが分かる可能性もあると思った。

北森鴻の『支那そば館の謎』(光文社文庫、2006)にある一編
「異教徒の晩餐」。
2002年春に雑誌に発表されている。
そこでの錦。

「錦市場 ―― 通称・錦 ―― は四条通に並行して延びる小路で、「京都市民の台所」ともいわれる。食材のみならず、おばんさいその他を扱う店屋が立ち並び、観光都市でない京都の一面を見ることができる場所として知られている。」(78頁)

ところで一転柏木圭一郎。
『京都祇園舞妓 追想の殺人』(小学館文庫、2009)。
2009年夏時点で、錦はこう描写される。

「狭い道の両側にぎっしりと店が建ち並ぶ『錦市場』は京都の台所と呼ばれている。プロアマ問わず、こだわりの食材を求めて多くの料理人が足を運んだ『錦市場』は近年、急激に観光化が進み、都人の足が遠のき始めている。アジア雑貨、ドラッグストア、たこ焼きの屋台など、およそ京都の台所とは無縁の店が派手な売り声を上げる。加えて最近では食材を商う店が軒先で素人料理を出すことも増えて来た。通りからも客が食べている姿が丸見えで、あまりみっともいいものではない。星井はそんな光景を見る度に眉を顰めているのだ。」(260頁)

(ここで出てくる「星野」は、柏木圭一郎の文庫書き下ろしミステリーシリーズの主人公。
小説内では、カメラマンで、探偵の役割を演じている。)


北森は、錦を「観光都市でない京都の一面を見ることができる場所」
と紹介できた。2002年のことだ。

柏木は、錦を「急激に観光化が進み、都人の足が遠のき始めている」ところ
とする。2009年のことだ。


この差、(あるいは、変化)愚かにもやや面白い。

2011年12月4日

北森の『ぶぶ漬け伝説の謎 裏京都ミステリー』(光文社文庫、2009)にも、錦市場への言及が…。
この文庫の最後を飾っている「白味噌伝説の謎」。
データを見ると、初出は『小説宝石』の2006年1月号。
書かれたの2005年末と推定できそう。

そこで錦はこうなっている。

「新京極通りから高倉通りに至る前の約四百メートル。錦市場は、言わずと知れた京都の台所だ。立ち並ぶ百三十軒あまりの生鮮食料品の店々は、見ているだけで楽しくなるほどだ。最近では観光客の姿も目立つが、通りに飛び交う声は、やはり京言葉が圧倒的に多い。エエ加減の塩鯖入ってまっせえ。千枚漬けもっていってやあ。」(214頁)

「最近では観光客の姿も目立つ」というのが重要では…。


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Posted by 愚華 at 20:36│Comments(0)読む
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