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2011年01月10日

宮部ワールドとの遭遇

予感があったがあたってしまった。

北国の紀伊国屋で、とある作家の文庫本群が、囁きかけてきた。
すごく迷ったのだが、買ってしまった。
迷ったのは、一冊読むと、次々に読まずにはいられない
「中毒症状」を呈するのではないか、という予想があったから。
それほど面白い作家だとは、ちまたの噂である。

囁きに負けた。

読んでみるとやっぱり面白い。


その作家は、宮部みゆき、である。


はじめは、短編集を選んだ。
いきなり長編で、それを読むのに拘束されたらたまったものではない、ということと、
もし万が一面白くもない長編に当たった場合、悲惨だからだ。

古本屋のイワさんを主人公とする連作短編を読んだ。
新潮文庫の『淋しい狩人』である。



短編は、6編入っていた。
最初の「六月は名ばかりの月」は普通。
しかし、2編目、「黙って逝った」でぐっとつかまれた。
おもしろい。
まず主人公の在り方がバブル崩壊以降20年の若者を象徴するような男である。
バブル崩壊直後の作品だが、その後を見通している。
目的もなく、生きているが、幸い仕事は正社のようだ。
父が突然死ぬ。(母はもうなくなっている)
その父のアパートに『旗振りおじさんの日記』というただ一種の本が、なんと302冊もあったのだ。
自費出版の本で、著者は長良義文。電話で問い合わせると彼は殺害されていた。
ここからいろいろ展開し、殺人犯もつかまり(物語の外でだが)、主人公も何かをつかむ。
一種の教養小説的になってもいた。

「うそつき喇叭」も面白くぞっとする。
『うそつき喇叭』という童話が登場する。怖い童話だ。
構造として、浦沢直樹の『モンスター』を思い出した。
「うそつき喇叭」は、小学生を先生が虐待するという展開。
あとでわかったが、小学校のころの憎しみというのは、
宮部みゆきの一つのポイントであった。

「歪んだ鏡」も面白い。
自分に自信のない若い女の内面を描くその筆力、それが第一。
その女が、山本周五郎の小説のなかの女の言葉で、世界の見え方が変わってしまう、それが第二。
古本屋の古本に宣伝のために名刺をはさみこむというアイディア、それが第三。
名刺をはさみこんだ男が背負っているバブルとバブル崩壊の影、それが第四。
そして「オチ」、これが第五。「オチ」はややあざとさもないわけではない。

「淋しい狩人」も、予想できる展開とはいえ、いわゆる本格推理も愚かにも好きなので、
楽しむことができた。
佐木隆三の『深川通り魔殺人事件』への言及もある。
宮部は、ブリーフ姿で包丁を振り回す川俣軍司を記憶に焼きつけているのかもしれない。
通り魔事件は1981年6月に発生。
佐木の本は、1983年6月発行。
宮部のこの小説は、1993年6月に発表されており、
小説ない時間は、1992年の6月頃である。
このあたりは意識的なしつらえかもしれない。


というわけで、宮部みゆきの次の本を買いに本屋へ走ることになった。



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