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2009年11月17日

『阿片王 満州の夜と霧』

佐野眞一の力作『阿片王 満州の夜と霧』を読了。
面白い。

文庫版で読んだが、単行本版以降発掘された諸事実も記載されており、文庫版が良さそう。
単行本としては2005年出版。文庫は2008年に出た。
続編として、『甘粕正彦 乱心の曠野』がある。これも文庫になると加筆されるだろう。

内容としては、里見甫という戦前大陸で暗躍した人物の伝記。
新聞記者、広告・情報・宣伝実務+秘密任務、阿片販売と仕事をかえ、
その人物の「大きさ」で、それぞれの仕事を、堅実にこなした。
戦後は、理由は判らないが、いわゆる第一線から退き亡くなる。

取り巻く人物がまたいろいろな形・方向でねじれていたり、大きかったり、小さかったりする。
読む分には興味を引かれ面白そうだが、実際には付き合いたくなさそうなものも多い。

ともかく、そうした人物ネットワークと、満州国という機関の奇怪な動きと、
その戦後日本における作動が見えてきて、グングン文中に引き込まれる。
手法は石原信太郎の伝記の場合と同じ。インタビューと文献で人物とネットワークを詰めてゆく。
手堅い力技。

ところで、京都も奇妙に関係していたらしい。
二つある。
一つは戦前のこと。里見甫と若松華瑶の繋がり。
二つ目は、GHQに発見されるまで、戦後、数年里見が京都に身を隠していたこと。
もちろんこの二つの事柄は、同じ地平上にあるが。

この京都つながりも大変興味深い。

『明治/大正/昭和 不良少女伝 莫連女と少女ギャング団』であるが、
昭和篇は、三角寛の本なんかを引用するよりも、佐野の『阿片王』と連絡させたほうが、
良かったのになあ、と思うが、どうだろうか。

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Posted by 愚華 at 10:55│Comments(0)読む
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